春冬の天候を支配してきた北風の勢力が衰え、
3月には風向きの急変や突風が起こる。
ニンガツカジマーイ(2月風廻り)である。
これが終わると、八重山にも春がやって来る。
4月に入れば天候が安定し、気温25℃以上の夏の陽気である。
3月下旬には日本最小の蝉、イワサキクサゼミが鳴き始める。
4月には、遥か南の地より春を告げる真紅の鳥がやって来る。
リュウキュウアカショウビン、方言名はゴッカルー。
デイコ、サキシマツツジ、フトモモ、イリオモテスミレなどが開花する。
色鮮やかな花鳥たち、若夏を迎える西表島を見つめよう。
夏ゴールデンウィークが終われば、沖縄は梅雨入りとなる。
梅雨明けの6月下旬の夏至のころ、
南よりやや強い、夏を告げる風がやって来る。
カーチバイである。
この季節風、10日間ほど続き、本格的な夏の到来だ。
連日30℃を越える暑い日が続き、キラービームが容赦なく降り注ぐ。
日差しから逃れるために、
僅かな日陰にも逃げ込む生活が続くこの時期は、
最も南国らしさを満喫できる季節である。
いくつかの台風が接近をし、決してコントロールすることの出来ない
自然の持つ力を見せ付けていく。
空を見上げれば、どこまでも続く濃紺の空。
発達した積乱雲に、一瞬にして光り輝く稲妻。
真夏の夜空、瞬く天の川を見つめよう。
秋夏の天候を支配してきた太平洋高気圧は東の海上に後退り、
10月の中ほどからは冬型の気圧配置が、幅を利かせてくる。
南からの風に変わり、北からの季節風が吹き始める。
ミーニシである。これが吹き始めると気温は徐々に下降する。
11月の天候は移動性高気圧と気圧の谷や前線が
交互に通過し周期的に変わる。
秋晴れの好天が数日続けば、それはもう、真夏と同じである。
夕暮れ時、河口に広がるマングローブを見つめよう。
冬12月から2月までは曇、雨天が多い。
八重山諸島は、北東の季節風が周期的に吹き続く。
だがそれがどうした、雨が降っていても、北風が強くても、
西表島の美しさに変わりはない。天候は荒れたほうが美しい。
降り続く雨により、山々に幻想的に立ち込める霧。
真冬に光を放つ、イリオモテボタル。
寒波が襲いくる時には、普段見ることの出来ない、
珍しい渡り鳥たちがやって来て越冬する。
幻の花、セイシカが咲き始めるのも2月ごろだ。
晴れている日に、セイシカの花色は映えない。
小雨まじりの密林の濃い緑の中に、セイシカの花色を見つめよう。
なんと美しき西表島。我が愛する浦内川。私はこの島の虜だ。2003年12月30日。
浦内川のマングローブ生茂る干潟にて、
イリオモテヤマネコの島であることの証。

西表の風にレンズを向け、どれくらいが経つだろうか。
早朝、夕方には染め上げられる空色を見つめた。
早起きは三文の徳だ。
川の水音を見つめ、海の音を見つめた。
降りそそぐ星に、瞬くイカズチを見つめ
夜更かしをして三文得したこともあったっけ。
木々の臭いを見つめ
密林に霧のまとう静寂を見つめ
花弁にしずくの散らばる花色を見つめ
野生動物たちの叫びを見つめた。
見つめ続けても、求められないものもある。
が、諦めずに最後まで追い求めよう。
2010年1月18日、カエルの歌の響く場所から白浜方面を眺める。

心を奪われる自然現象の一つが、薄明光線だ。
雲の切れ間から地上に降り注ぐ光は、
天へと通ずる梯子として見なされても、なんら不思議はない。
確かにこの様を見つめていたら、
天使が上り下りしているのが、見られるのではないか。
そんな事を思わせる、ランドスケープだ。
雲が無ければ、この現象は起こりえない。
美しき空色から外せないのがやはり、雲だ。
美しき自然現象。
神が何かはよく分からないが、神々しい。
2009年12月29日、美田良浜上空。

この日の早朝は、空だけではなく、全てのものが赤く染まった。
夜遅くから、激しく降り注ぐ雨。
雷鳴と共に瞬く雷光。
朝方には雨も雲に留まり、光が霧を染め上げる。
いつか見つめた、紅型の色彩を思い起こす。
雷光を求めさまよい、この空色に出会うことが出来た。
あ~、眠い。
2009年9月27日、展望台から眺める早朝の浦内川河口。

美しき空色を構成する要素の一つとして外せないのが、雲だ。
幾重にも重なり合うその姿は、
世界最大の淡水魚の一つに数えられる、ピラルクーの鱗を思わせる。
恵みの雨をもたらすだけではない。
強き日差しから守ってくれるだけではない。
美しきランドスケープを与えてくれる。
天候は荒れたほうが美しい。
そういうものだ。
2009年8月23日、まるまビーチから眺めた空色。

アトゥク島と星を見つめにいき、この奇跡のランドスケープに出会った。
我が心を奪う、美しきランドスケープたち。
寝不足になるのも、致し方なし。
なんと言う空色であろうか、真夏の夜の共演だ。
何とも贅沢な組み合わせ、雷光と天の川。
2009年8月16日、美田良から望む外離島上空。

その昔、17世紀のカリブ海をまたにかけた
海賊キッドが財宝を隠したとされるアトゥク島。
キャプテン・キッドもこんな空色を見つめたんだろうか。
2009年7月22日、皆既日食に沸いた日の浦内川河口、アトゥク島の夕景。

可視光線には、長波長、中波長、短波長、
さまざまな波長の光がいろいろな割合で合成されている。
人間の錐体細胞は、それぞれある特定の波長の範囲に
最大限反応するようになっているそうだ。
これら三種類の波長を錐体細胞からの刺激を大脳が組み合わせ、光の色が認識される。
例えば、波長577ナノメートルから597ナノメートルが、
目に入り網膜を刺激したとする。
長波長に反応する錐体細胞と、中波長に反応する錐体細胞が興奮する。
だが、短波長に反応する錐体細胞はほとんど興奮しないらしい。
三種類の錐体細胞の反応の差を大脳が分析し、この美しき橙色と認識するそうな。
なんのこっちゃ、よ~分からんが、
こんな難しいことを思いながら、空色を見つめたことは無い。
なんとも複雑なことを、
いとも簡単にやってのけてしまう人間の脳って素晴らしい。
2009年4月4日、白浜港上空の夕景。

海から生まれたからであろうか、水の近くというのは何とも心地がよい。
夜の滝は何物にも邪魔をされる事無く、自然に溶け込むことが出来る。
月明かりに照らされたマリユド。
遥か昔よりこの場所で、豊富な水を湛え、この島を支えてきた。
星の瞬く時間帯には、こんなランドスケープを見つめることが出来る。
夜更かしは三文の徳と、言うではないか。
今では安全面から、近付く事の出来ないマリユドの滝。
2009年2月2日、夜のとばりの降りたマリユドの滝上空。

日本国内でベゴニアの野生種が自生するのは八重山諸島だけである。
自生する2種のうちの一つ、マルヤマシュウカイドウの花色は淡い紅色。
渓流沿いにひっそりと花を咲かせるその姿、
その花色は、しとやかでいて透明感があり、とても美しい。
激しく燃え上がる紅空もいいが、
マルヤマシュウカイドウの花色を思わせる、
淡い紅色の空も良いものだ。
2009年1月30日、早朝の浦内川河口。